もくじ
会話が噛み合わないのは、悪気があるわけじゃない
ぽんさんと話していて、「ん?なんで今この話?」と思うことがよくあった。
話していた内容とは全然違う話題が、突然飛び出してくるからだ。
最初はそれに戸惑って、会話がかみ合わないことにイライラしたり、悲しくなったりすることもあった。
でも、ぽんさんにとってはそれが自然な思考の流れだということが、少しずつわかってきた。
例えば「今日の晩ごはん、何にしようか?」という話をしていたのに、急に「駅前の家電量販店って何時までやってるっけ?」みたいな話になる。
話題が突然飛んだように見えても、ぽんさんの頭の中では「今日の晩ごはん→晩ごはんの後にはお風呂→あ、お風呂の電気が切れてたから電球買わなきゃ→家電量販店の営業時間を確認しよう」と、ちゃんと繋がっている。
一緒にいるうちに、私もその“思考のジャンプ”の癖をだんだん読めるようになってきた。「なるほど、それを思い出して今そこに繋がったのね」って思えるだけで、話が噛み合わないことへのストレスはずいぶん減った。
話し合いは「図にして整理」が効果的
ぽんさんと意見がすれ違ったときや、説明がうまく伝わらないときには、「ちょっと紙に書くね」と、紙とペンを出すことがある。
言葉だけで伝えると誤解が生まれやすい内容も、文字や図にして視覚化することで整理しやすくなるからだ。
例えば、「これはぽんさんの考え」「こっちは私の気持ち」「ここがズレてるんだね」と、見える形にすると、不思議とお互い冷静になれてくる。
「こうしたらどんなメリットがあるのか」も書き出したりする。
図や表にして話すことで、ぽんさんも情報を整理しやすくなるようだし、私自身も落ち着いて話せる。
この“図にして話す”という方法は、お互いの理解を深めるうえでとても役立っていると思う。
伝え方の工夫で変わることもある
ぽんさんは一度にたくさんのことを言われると、頭の中がごちゃごちゃになりやすい。
だから私は、できるだけ一つずつ、簡潔に伝えるようにしている。
「あれもこれも」ではなく、「まずこれをお願い」「次にこれ」と、順番に伝えるだけで、驚くほどスムーズにいくことがある。
また、時間に余裕があるときは、「これをやってほしい理由」や「それによってどう助かるのか」も一緒に伝えるようにしている。納得感があると、ぽんさんも前向きに取り組めることが多い。
例えばぽんさんは、話している内容をよく忘れる。
だから、朝に「今日の帰りにスーパーに寄って、卵と牛乳を買っておいてほしい」「分かった」というような会話をしていても、帰りには当然のように忘れている。
私から買い物をお願いする時は「お買い物リスト」をメッセージで送るようにしている。
「これから帰るね」という連絡をする時にそのメッセージがあることに気付いたら、「あ、そういえば帰りに買い物しなきゃ」と思い出してくれるから。
「どうしてそう思ったの?」と聞いてみる
話のすれ違いが起きたとき、すぐに否定せずに「それってどうしてそう思ったの?」と聞いてみるようにしている。
すると、ぽんさんの中でどんな考え方や連想があったのかが見えてくる。
ADHDのぽんさんは、私とは違う順序やロジックで物事を考えていることが多い。
最初は理解できなくても、理由を聞いてみると「ああ、そういう流れで考えてたんだね」と腑に落ちることがよくある。
これも、一緒に過ごす時間が増えて、少しずつ身についてきたことだと思う。
伝わらない前提で、でも伝えようとすること
ぽんさんと話していて、「これ、ちゃんと伝わったかな?」と思うことは今でもある。
何度も同じことを伝えているのに、また忘れてしまったり、違う受け取り方をしてしまったりすることもある。
だけどそれを責めても、ぽんさん自身が一番つらい。
それにうまく伝えられないことやきちんと理解できていないことがあるかもしれないのは、ぽんさんだけじゃなく私も同じ。
だから、「伝わらない前提」で、でも「伝えようとする努力」は忘れないようにしている。
「前も言ったよね!」じゃなくて、「これ、もう一回確認しておこうか」という言い方に変えるだけで、お互いの空気が柔らかくなる。
完璧な理解なんてなくていい
ADHDの特性を持つぽんさんと、特性を持たない私とでは、物事の感じ方や考え方に違いがあって当然だと思う。
それでも一緒に生活していく中で、「少しでも理解しよう」という姿勢があるかどうかで、関係は大きく変わる気がしている。
ぽんさんは、自分の苦手さや混乱を隠さずに話してくれることがある。
私はそれを「そうなんだ」と受け止めることにしている。
理解できないことも多いけれど、完全に理解できなくても、少しでも歩み寄れるように。
ADHDとのコミュニケーションは、ひとつの正解があるわけではないけれど、こうして一緒に試行錯誤していくことが、私たちにとっての答えなのかもしれない。
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