もくじ
ADHDは「怠け者」ではない
ぽんさんがADHDを持っているとわかった当初、私はその特性についてよく理解していなかった。
なかなか物事を計画通りに進められず、集中力が続かないぽんさんの様子を見て、「やればできるんじゃないの?」と思ったこともあった。
でも、一緒に過ごす時間が長くなるにつれて、ぽんさんがどれだけそれに苦しんでいるのかがだんだんわかってきた。
ぽんさんは、毎日ちゃんとやろうとしている。でも、どうしてもできないことがある。
そのせいで、「怠けている」と思われてしまう。でも実際は、ADHDの特性によって、うまく動けないだけだった。
たとえば、計画を立てても途中で気が散ってしまったり、別のことが次々に気になって集中できなかったりする。
その結果、「やる気がない」と見なされる。これが、ぽんさんを一番苦しめていたように思う。
できないことで自分を責めてしまう苦しみ
「できて当たり前のことが、なんで自分にはできないんだ…」
ぽんさんがよく口にしていた言葉だった。
ぽんさんは、自分の特性を理解しようとしていたし、どうにかうまくやろうとして努力もしていた。
でも、それでもうまくできない時、強い自己嫌悪に襲われていた。
仕事の準備を忘れたときや、段取りを間違えてしまったとき、ぽんさんは本当に落ち込んでいた。
「またやってしまった…」と自分を責めて、どんどん自信を失っていく。
周りから見たら些細なミスかもしれない。でも、本人にとっては「また自分はダメだった」という強烈な否定の材料になる。
それが積み重なっていくと、自分の存在自体が否定されているような感覚になるみたいだった。
ぽんさんが静かになるとき、怒っているんじゃなくて、そうやって一人で苦しんでいることが多かった。
周囲と関わることが怖くなる
ぽんさんは、人と関わること自体が怖くなってしまった時期もあった。
「また失敗したらどうしよう」
「迷惑かけたくない」
そんな気持ちが強くなって、人付き合いを避けるようになっていた。
特に仕事では、「また何か言われるかも」「またがっかりされるかも」と感じて、委縮してしまっていた。
失敗することで人間関係まで壊れてしまうような気がして、ぽんさんは人との距離をとっていた。
本当は誰よりも真面目で、ちゃんとやりたいと思っているのに。
それがうまくいかないから、自分の存在を否定して、関係も断ってしまう。
その姿を見るたびに、私は胸が痛んだ。
「怠け者」と決めつけないでほしい
ぽんさんは決して怠けてなんかいない。
むしろ、できないことを少しでもできるようにしようと、毎日必死だった。
それでもどうしてもできないことがある。
だから「もっと頑張れ」と言われるたびに、自分を責めて、ますますできなくなってしまう。
それがまた周囲との距離を生み、悪循環になってしまう。
でも、ぽんさんは本当は人と関わりたいし、ちゃんとしたいと思っている。
その思いだけでも、周囲に届けばいいのにと思っていた。
ADHDの人たちの多くが、こういう形で「怠けている」「やる気がない」と誤解されてしまっていると思う。
それが本人にとってどれほどつらいか、少しでも想像してもらえたら嬉しい。
「もしかしたらADHDかも?」という視点
ADHDかどうかは、見た目ではわからない。
だから、職場や身近な人に対して「なんでこんなこともできないんだろう?」と思ったときは、
「もしかして、この人もぽんさんみたいな特性があるのかもしれない」と考えてみてほしい。
自覚がないパターンもあるし、デリケートなことだから、もちろん本人に直接聞く必要はない。
ただ、「その可能性がある」ということを頭の片隅に置いておくだけで、相手に対する思いやりを発揮できる。
得意不得意は誰にでもある。
「こうしたらやりやすい?」「今のタスクの量は負担?」と聞いてみるだけでも、その人にとっては大きな助けになることがある。
やり方が違っても、目指すゴールが同じなら問題ないはず。
ADHDの人を理解するために
ぽんさんのように、努力してもどうしてもできない部分がある人は多い。
その人たちを少しでも理解して、責めるのではなく支えることが、周囲にできるサポートだと思う。
特性ゆえにうまくいかないことがあるということ。
それを否定するのではなく、どうすれば一緒にやっていけるかを考えること。
そうした視点を持つ人が増えれば、ぽんさんのように悩む人が少しでも楽になれるんじゃないかと思う。
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