もくじ
膝の上でゆるゆると眠るベル
うちの犬・ベルは、人の膝の上で寝るのが大好き。
お気に入りの場所を見つけるように、ちょこんと膝に乗ってきて、くるくるっと丸くなる。
しばらく撫でていると、すうすう寝息を立てて、だんだん手足を伸ばし始める。
リラックスしてくると、体がゆるゆるに伸びきってくるのが可愛くてたまらなかった。
私は4時間座れるけど、ぽんさんは5分が限界
私は、在宅勤務のときなんかは平気で4時間くらい座りっぱなしになるタイプだった。
本当はこまめに立ち上がったり、足を動かした方が身体にはいいとわかっているけど、ついつい後回しにしてしまう。
膝の上にベルが寝ていると、「このままでいいか」と思ってしまうし、何より癒される。
でも、ぽんさん(夫)はまるで違った。
じっと同じ姿勢を保つのがどうにも苦手で、「うがー!」となってしまう。
ADHDの“じっとできない”は、実は“集中するため”だった?
これはADHDの特性のひとつでもあるらしい。
集中しているように見えても、実は身体のどこかがずっと動いている。
足の指とか。
注意がそれているわけじゃなく、むしろ「体を動かして刺激を与え続けることで集中力を保っている」状態なのだとか。
つまり、落ち着きがないのではなく、「動くことで落ち着いている」のだった。
動かないと落ち着かなくなってしまう。
ベルは可愛い、でも動けないのはつらい
だからぽんさんにとっては自分の膝でベルが丸くなると複雑な気分のようだ。
ベルは可愛い。
でも、ベルにすやすや眠っていてもらうためには、あまりソワソワ動くわけにいかない。
でも動けない状態は辛い。
そんなジレンマに襲われるようだ。
膝の上をめぐる小さなバトル
ぽんさんはベルを可愛がりながらも、しょっちゅう姿勢を変えていた。
ベルはめんどくさそうに目を開けて、「ああなんだいつものパパのソワソワタイムか」というようにまた目を閉じて寝息を立て始める。
それでもダメなときには膝の上で気持ちよさそうに伸びていたベルをぽんさんがふわっと持ち上げて、私の膝に移動させることもある。
そうして自由の身になった上で、自分は膝を立てたり、あぐらをかいたり、足を組み替えたり……忙しい。
“カタカタ”する夫をツン。笑って止まる動き
最初のころは、ぽんさんの“カタカタ”という動きが視界に入るたびに気になって、落ち着かなかった。
貧乏ゆすりみたいに膝が揺れているのを見て、正直「やめてほしいなぁ」「ちょっと鬱陶しいなぁ」と思っていた。
でも、本人は全くの無意識らしい。
ある時、その動いている膝をツン、と指でつついてみた。
ちょっと鬱陶しかったからだけど、ふざけて笑いながら。
すると、ぽんさんは「はっ」として動きを止め、「あっ…動いてた?」と気づいたようで苦笑した。
自覚なく動いてるんだなぁと思うとなんだか不思議で、少し笑ってしまった。
動かない犬と、動かずにいられない夫
ベルが「動きたくない生き物」だとしたら、ぽんさんは「動かずにはいられない生き物」だった。
静と動、正反対のように見えるふたりが、同じソファに座っている光景は、なんだかおかしくて、そしてちょっと愛おしく思える。
お互いにとってベストな姿勢じゃなくても、なんとなく馴染んでいく。
そんなところが、ちょっと家族っぽくていいなと思う。
今日も隣に座る膝は、静かにカタカタ揺れている。