「天然だね」に傷つく夫。その言葉の裏にある、小さなズレと大きな優しさ

「天然だよね」の意味

「ぽんさんって、天然だよね〜!」

そんな言葉を、ぽんさんは時々かけられる。
職場や友人とのやりとりの中で、気のおけない仲のいい人から言われることが多い。
だけどぽんさんは、その一言にちょっと傷ついていた。

「なんで?けっこうみんな言われてない?」と私が聞くと、ぽんさんは、少し間をあけてこう答えた。

天然って、オブラートに包んでるけど、バカってことでしょ
そう言って、ぽんさんはちょっと凹んでいた。

「天然」って、悪口なの?

私自身、「天然」という言葉にネガティブな印象を持っていなかった。
どちらかというと、「おっとりしてる」「マイペース」「面白い」「愛されキャラ」といったニュアンスで、悪意のない軽口くらいに思っていた。

だからこそ、ぽんさんが傷ついていることに最初は少し驚いた。
でも話を聞いていくうちに、

「なるほど、そう感じる人もいるんだ」
「仲のいい人から言われるからこそ、余計に戸惑うんだな」
と、だんだんと理解できるようになっていった。

繊細さと、ぽんさんの感じ方

ぽんさんは、普段からとても繊細な人だ。
ちょっとした一言にも、相手の意図や自分の受け取り方を深く考える。
きっとこれまでにも、「変わってるね」「不思議キャラだよね」などと言われた経験が重なってきたのだと思う。

そして、「天然だね」と言われたとき、「またズレてたのかな」「変に思われたのかな」と自己否定に繋がってしまう。
まじめで、人とズレていたらどうしようという気持ちが強いぽんさんにとって、そういう何気ない一言がグサッと心に刺さってしまうのかもしれない。

もしかしたら、ADHDの特性かもしれない

ぽんさんの反応や会話のズレには、ADHDの特性も関係しているように思う。

たとえば、会話中に一瞬違うことを考えていて、ちょっとトンチンカンな返答をするとき。
話の前提が抜けていて、「そこ!?」という切り返しをするとき。
マイペースで、周囲とテンポが合わないとき。

こういうことがあると、周囲からは「不思議な人」「ちょっと抜けてる」と見られてしまうことがある。
そして、それが「天然だね」という言葉に変換されるのかもしれない。
私自身、ぽんさんのことを「天然だなぁ」と思っていたので、相手の気持ちもすごく分かる。

でもぽんさん自身は、ちゃんと相手に向き合いたいと思っているし、バカにされたくないという気持ちもある。
自分ではちゃんと受け答えしているつもり。それなのになぜバカにされるのか、みたいな葛藤。
だからこそ、「天然」という言葉には複雑な思いがあるのだと思う。

その一言が、誰かを傷つけることもある

私はというと、ぽんさんとの会話で「天然っぽいな」と思うことは正直ある。
でもそれは決して「バカにしたい」とか「見下している」気持ちではなくて、
ぽんさんらしい“間”とか、“視点のユニークさ”に思わず笑ってしまう、というような感覚に近い。

だけど、ぽんさんがそれで傷ついたのを見てからは、
「そう感じる人もいる」ことをちゃんと覚えておきたいと思うようになった。
私が何気なく口にした一言も、誰かにとっては心の奥に残るものかもしれない。

「天然」は、ユニークでまっすぐな人の証かもしれない

そもそも「天然」って、
「人と違う=間違ってる」ではなくて、
人と違う=自分のペースや世界があるってことじゃないかな、と思う。

ぽんさんは、たしかにちょっとズレてる返答をすることがあるけれど、それがぽんさんらしくて、私はむしろ魅力だと感じている。

自分では気づかないうちに、人と違う角度から世界を見ている。
その視点が、私にとっては新鮮で、面白くて、時々癒しになっている。

自分の言葉を見直すきっかけ

「天然だね」に傷つく人がいるなんて、私は正直、思ってもみなかった。
それに気づけたのは、ぽんさんが傷ついている姿を見たからだった。

自分では何気ないつもりでも、それが誰かの自己否定に繋がってしまうこともある。

大げさに言うと、「言葉って、やっぱり重いんだな」と思った。
それ以来、私も自分の言葉の選び方を少し見直すようになった。

愛のある視点を、大事にしたい

ぽんさんと一緒にいると、「人と違うこと」「ちょっとズレてること」って、実はそんなに悪くないな、と思えるようになる。

大切なのは、そのズレを「おかしい」と笑い飛ばすのではなく、「へえ、そういう感じ方もあるんだね」と受け止めること。
そして、誰かが傷ついていたら、「どうしてそう感じたのか」をちゃんと聞いて、考えてみること。

ぽんさんの繊細さは、私にそんな優しい視点を教えてくれた。
何気ない一言が、誰かの心に深く残ることがある。
そのことを教えてくれたぽんさんに感謝している。

言葉の重みを忘れることなく、優しく相手に届けられる自分でいたい。
「天然だね」に隠れた、たくさんの気持ちと一緒に。