もくじ
夫の返事が意味不明な件について
「夫の返事が意味不明すぎて不安になる」「なんでそんな答えになるの?」
そう思ったことのある方は、きっと私以外にもいるのではないだろうか。
ぽんさんの返答はしょっちゅう斜め上を行くので、日常的に「なんでやねん」となりがち。
回答自体は、それはそれで情報としてはアリだけど、こっちが質問したのはそこじゃない…なんてことがよく起きる。
ADHDの人は、「頭の中が忙しい」と表現されることが多い。
情報量が多くて、あっちこっちの情報に手を伸ばしているイメージのようだ。
たしかに、ぽんさんの答えを聞いている限り、頭の中の情報量はめちゃくちゃ多そう。
ぽんさんの話があっちこっちに飛んでいくのも、そうした特性から来るものかもしれない。
寒いから…で会話が終了する世界線
ある寒い日の夕方。
ぽんさんに、今日の晩ごはんについて相談しようとしたときのこと。
「今日どっか食べに行く?それとも家にあるやつでなんか作る?」
と、私がぽんさんに聞いてみた。
「〇〇を食べたい」とか、
「〇〇に行きたい」とか、
「俺が何か適当に作るよ」とか、
そういう答えが返ってくることを予想していた。
しかし返って来たのは
「うーん、今日寒いからねぇ」
だけ。
少し待ってみても続きはない。
どうやら会話のキャッチボールのボールはすでにぽんさんの手にはないようだ。
いや、寒いのは知っとる。
こっちは「寒いから」の続きを知りたいんだ。
仕方ないので、寒いから出掛けたくない…ということかな?と推測して話を続けてみる。
それが当たりでホッとする時もある。
でも、「いや、寒いから家の近くの店に行きたいって意味」だと言われてぽかんとしたこともある。
質問に一切答えないという新技
ぽんさんが友人と遊びに出掛けた日のこと。
夕方を過ぎても連絡がなかったため、ぽんさんが晩ごはんを食べて帰るのか分からない。
そこで、「帰り何時頃になりそう?ごはんは外で食べてくる?」と私からメッセージを送った。
ぽんさんからは比較的早く返事が返って来た。
「今帰ってる」という一言が。
「いやァ…」と、思わずツッコミともため息ともつかない心の声が漏れる。
連絡を返すのに私の質問に1個も答えないスタイル。
ごはんを食べているのか、今どこから帰ってきているのか、何時頃に家に着くのか、何にも分からない。
これに関しては、おそらく「遅い時間まで連絡がないことに心配している」と思ってとりあえず一報をくれた可能性が高いと私は踏んでいる。
確かに連絡がないよりは何かしら連絡をくれたら安心する。
でもさ。
それなら先に送った質問に答えてくれてもいいんじゃないの…。
本来は1回で終わるはずの連絡が、4回、5回にまで増えることも少なくない。
お腹空いた?の返事が未来を見る
ご飯を食べに行くか、家で食べるかを聞いてもダメだ。
まずは「お腹空いた?」から始めよう。
そういう努力をしていた時期もあった。
どれだけこちらが努力しても、ストレートに会話が成立しないこともある。
「はい」か「いいえ」で答えられる質問をしても、ぽんさんの答えはなんか斜め上になることが多い。
「お腹空いた?」に対して、
「明日何か予定あったっけ?」と返ってくる。
でもこれも「慣れ」だ。
おそらくずっと100%の理解はできないけれど、ぽんさんの思考回路が少し読めるときもある。
「お腹空いた?」からの「明日何か予定あったっけ?」の場合、ぽんさんの思考回路はたぶんこんな感じ。
「お腹空いた?」
↓
そうかそろそろ晩ごはんの時間か。どうしようかな
↓
家で作ってもいいけどせっかくだし外食がいいな
↓
外食するならお酒を飲みたいな
↓
居酒屋でも行って盛り上がったら結構飲むかもしれない
↓
そうなったら明日二日酔いでしんどいかも
↓
明日予定がないなら飲みに行きたいな
↓
「明日何か予定あったっけ?」
と、こんな具合だ。
だから「明日は何も予定ないから、今日はお酒飲みに行こうか」と誘うと、「そうしよう!」とぽんさんも笑う。
これがうっかり予定が何かあったりすると、その予定の方に意識が向いてしまって、晩ごはんのことは忘れ去られる。
本人も混乱する履歴
この斜め上の返答は、喋っている時だけじゃなくてLINEでも起きる。
LINEの場合は声のトーンや間が分からない分、「推理」がしにくい。
会話が成立していない、めちゃくちゃなLINEのやりとり。
それを後日、笑いながらぽんさんに見せると、「俺は何を言ってるんだ…?」と困惑していたりする。
後から見たら本人でも自分の発言の意味が分からないらしい。
その場その場で思いついたことを言っているから覚えていないんだろうな、と私は解釈している。
当然、後日「前に送ってくれたこれ、どういう意味?」と聞いても「なんだこれ?」と首を傾げている。
最初の頃は「LINEで文字を見たら意味が伝わりやすいかも!」と、LINEで送る工夫をしてみたが、そんなわけで意味はなかった。
目で見たら会話が噛み合っていないことも分かるかな、と思ったけど、肝心な「その時」には気付かないらしい。
「分からない」から「分かりたい」へ
最初はその推理ができなかったので、ぽんさんの発言や返事は本当に訳が分からないことが多かった。
当時は「ちょっと抜けてる人」そして「天然だなぁ」と思い、生温かく見守っていた。
AかBかを聞いたら数字で返ってくる。
それなのに、いつしか「つまりぽんさんが言いたいのはこういうことか…?」と推理して話を組み立てることができるようになった。
ぽんさんの人となり、そしてADHDの特性があることを知ったからだと思う。
知ることは本当に大切だ。
きっとぽんさんのことを100%理解はできないけれど、それでも彼のことを知っていること、知ろうとしていることで一つずつ明日に繋がっていく。そんな気がしている。
今日もまた、突飛な返事にずり落ちる
最初の頃は「私がしっかりしなきゃ」と思っていた。
ぽんさんが時々とんちんかんなことを言い出しても、私がフォローしなきゃ。
一緒にいる私が何とかしなきゃ。
だけどそう思えば思うほど、自分を追い詰めているのが分かった。
だから、今はもう私が一方的に頑張る必要はないと思っている。
ADHDとは言え、私がうっかり忘れものをした時にぽんさんがカバーしてくれることだってある。
今でも「私がしっかりしなきゃ」と思うことはあるけれど、前ほどは気にしなくなった。
私だって完璧じゃない。
私と同じく、ぽんさんも完璧じゃない。
今日も完璧とは程遠いぽんさんの返事にずり落ちながら、いつもの日常を噛み締めている。