もくじ
休日の朝でも、ちゃんと起きるように

私はベルがうちに来るまで、休日はここぞとばかりに惰眠をむさぼっていた。
ぽんさんはどちらかといえば「休みの日なのに寝てるのはもったいない」と起きるタイプ。
でも、ベルにごはんをあげる時間を朝8時と決めてからは、どんなに眠くても起きるようになった。
「ベルがお腹を空かせて待ってる」と思うと、自然と体が動いた。ぽんさんも同じようで、朝の支度をしながらベルのごはんの準備をしてくれていることもあった。
自分たちの都合ではなく、誰かのために早起きするようになったのは、大きな変化だった。
生活リズムが整った、不思議な変化

ベルのごはんは朝8時と夜20時。このリズムに合わせて生活しているうちに、私たちの暮らしにもメリハリが出てきた。
夜遅くまでだらだら起きていたり、不規則な時間にごはんを食べていたりした生活から、「時間を意識して動く」ようになっていった。
一見小さなことだけど、生活の土台が整ったような安心感があった。
ぽんさんとお出かけする時は、どれだけ帰りが遅くても20時までには帰ろうと決めていた。
万が一帰りの電車や道路の渋滞があって遅れたらベルが可哀想だったから、もう少し早めに帰宅するようにしていた。
「うちは門限があるからなぁ」とぽんさんと笑い合った。
不自由にも思えるけれど、ベルのためなら苦痛に感じなかった。
それもまた不思議な変化の一つだ。
もともと動物好き。でも、短毛種はちょっと…だった

私は昔から動物が好きだったけど、どちらかというとふわふわの毛を持つ子が好みで、短毛種にはあまり興味が持てなかった。
「骨と皮」みたいな姿が何となく怖くて、特に細い手足は折れそうで怖かった。
でも、ベルと一緒に暮らしてみたら、あのつるんとした肌触りや眠るときにぴったり体を寄せてくる温もりがたまらなく愛おしい。
押し付けてくる分厚い胸筋の圧でさえも愛くるしかった。
かんたんブラッシング

短毛種の具体的なメリットでいえば、ブラッシングの手間や抜け毛のトラブルが少ないこと。
ブラッシングはするけれど、ラバーブラシ1つで十分こと足りる。
膝でゴロゴロしている時は眉毛くらいの長さの毛が服につくことはあっても、「ペットの抜け毛が部屋中を舞っていて大変」なんてことはまずない。
私はアレルギー体質なので、これは本当にありがたかった。
ベルのシャンプーも、乾かす毛が短い分ドライヤーが短時間で済んだ。
ベルはドライヤーが好きではない…というか、いつもドライヤーに戦いを挑もうとするので、短時間で終えられるのは助かった。
そんなこんなで、今では短毛種の魅力にどっぷりハマっている。
二人して新型コロナウイルスに罹った時も

ぽんさんと私が新型コロナウイルスに罹ってダウンした時、まだ子犬だったベルが心配してくれていた。
毎日サークルの中に私やぽんさんが入ってベルと一緒に遊んでいたけれど、その時は先に罹ったぽんさんの方が症状が重くて、ぽんさんは寝込んでいた。
私は39度の熱があったけれど、遊びたくてうずうずしているベルを放置することはできず、いつもより鈍い動きでサークルに入った。
ベルはいつも通り喜んで、お気に入りのおもちゃを持ってきた。
でもいつものようにじゃれついてこなくて、正座している私の膝の上に座り、じっと顔を見上げた後、そのままはしゃぐことなく膝の上で丸くなった。
「なんかいつもより体調が悪そう」と察したのかもしれない。
私はベルの優しさを感じて、しんどかったけれど癒しをもらい、サークルの中で幸せを噛み締めていた。
その後ぽんさんが先に回復し、私の症状がピークだった時、私は一人で洗面所で苦しんでいた。
喘息のような呼吸音がして息苦しくて、うずくまっている状態。
ぽんさんは少し離れた部屋にいて気づいていなかった。
その時、初めてベルが吠えた。
不慣れな吠え方で、「ワン!」というより「ぼっ」という感じの声。
ぽんさんも私も驚いた。
廊下で吠えたベル自身も、自分の声に戸惑っていたように見えた。
ぽんさんは何があったのかと驚いて部屋を出てベルに近付き、ベルはまっすぐに洗面所の私の元へ走ってきた。
ベルを追って来たぽんさんはうずくまっている私を発見して、慌てて背中をさすってくれた。
ベルはまるで立派な救助犬のようだった。
ベルと信頼関係を築けているのだと、その時実感した。
ぽんさんとの共通の“家族”ができた

ベルが来てから、ぽんさんと私の会話にも変化があった。
「今日ベルがね…」「またあの顔してたね」と、お互いの気持ちがすれ違いそうな時でも、ベルの話をすると自然と和やかになった。
同じ存在を大切に思うことで、気持ちを共有する時間がぐっと増えた。
会話の量も増えたのに、喧嘩は減った。
少し険悪な空気になった時は、ベルが傍で悲しそうな顔をしていたり、おそるおそる止めに入ってきたりすることもあった。
ベルには可哀想なことをしてしまったと思う。
「ごめんね」とベルと相手に謝って、ベルのためにも険悪な空気にならないように互いに努めることができた。
そのおかげで、互いに相手を理解できない時があっても穏やかで良い関係を築いてこられたと思う。
「言葉にする」ということ

「うちに来てくれてありがとうね」
「大好きだよ」
「今日も可愛いね」
「お利口さんだね」
そんな言葉を私は毎日のように伝えている。
言葉の足りないぽんさんも同じようにベルに話しかけていて、ベルに語りかけることで言葉数が増え、結果的に私に伝える言葉も少しずつ増えていった。
だから、ベルは私たちのコミュニケーションの架け橋にもなってくれている。
小さな命がくれた、優しい暮らし

ベルが来てから、暮らしの中に「ちょっとだけ頑張る」が増えた気がする。
朝起きる、時間通りに動く、いつもより丁寧に生活する――全部ベルの存在があってこそだった。
大変なこともあるけれど、それ以上に癒しと優しさが増えた毎日。
これからも、ベルと一緒に、穏やかで優しい日々を重ねていきたいと思う。
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