もくじ
3人になると急に静かになるぽんさん
ぽんさんと、ぽんさんの友人と、私。
そんな3人になる時、ぽんさんはすごく静かになる。
私と、あまり私と親しくないぽんさんの友人が喋って盛り上がっているのを隣で笑って聞いているスタンス。
自分が心を開いた人同士が盛り上がっているのを見るのが楽しいのかなと思っていた。
元々ぽんさんは率先して喋り出すタイプではなく、どちらかと言えば聞き役の方だから。
職場の人とぽんさんと私の3人で喋る時も、ぽんさんは基本的に無口だった。
話を振られた時に話すくらいで、私はなんとなく居心地が悪くて、「私がいると話しづらいのかな」と気にしていた。
でもそれは少し違っていた。
「誰かを置いていってしまいそうで不安」という理由
ぽんさんが地元に帰省して数日後。
家に帰って来たぽんさんはだいぶ疲れていた。
最終日は仲の良い学生時代の友人と飲みに行くと聞いていたので、楽しんできたものと思っていた。
長旅で疲れたのかと思ったらどうも違ったらしい。
「〇〇と〇〇で三人で飲みに行ったんだけど…3人って苦手なんだよね」
ポツリと呟くぽんさんに私は首を傾げた。
3人が苦手というのがイマイチしっくりこなかったから。
詳しく聞いてみると、3人で話すという空間自体が苦手なようだった。
2人と平等に喋らなければと気を遣ってしまい、苦痛に感じるらしい。
どっちかと喋っていたら、気付かない間に1人を置いてきぼりにして仲間外れにしてしまいそうだからという理由だった。
とても気を遣うわりになかなか平等に喋ることができず、どうしていいか分からない。
どちらかを仲間外れにするくらいだったら自分が黙って、2人が楽しく喋ってくれていたらそれでいい。
そんな優しさから、ぽんさんは3人になると黙りがちになってしまうのだ。
実はこれ、ASDの「対人調整が難しい」特性に近いもの
ぽんさんはADHDだけではなく、ASDでもある。
ASDの特性として、「他者との距離感・視点の切り替え」が難しいことが挙げられる。
1対1なら相手のペースに合わせやすいが、複数人だと処理が追いつかなくなる。
「3人の空間が苦手」というのはまさにこのASDの特性そのもの。
ぽんさんは「誰かを不快にしたくない」という気持ちが強いあまり、どこにもない「正解」を探し続けて疲れてしまう。
「この話題、今のこの人にとって大丈夫?」を常に気にしている。
例えば、離婚しそうな友人の前で妻(おとまる)の話をしても良いのか…とか。
その場の空気を読み取って自然に振る舞うこと自体が難しい。
だから、結果的に何も言わない選択をしてしまうのだ。
静かなぽんさんの受け止め方
その話を聞いて、私はとりあえず「無理に会話に入らなくていいよ」と伝えてみた。
言われてすぐにどうこうできるものではないとしても、少しは気が楽になるかもしれない。
正直、悪意を持って誰かを仲間外れにしようとしない限り、友人同士の話題なんてどんどん流れていくものだと思う。
「この話よく分からないな」と思っても、その後の話題では自分がよく知っている話題に変わったりする。
だから一時的に1人と盛り上がってもそれほど気にする必要はないし、相手もたぶん気にしていないと私は思う。
だけどそう言っても意識を変えるのはなかなか難しい。
むしろ相手からすればぽんさんが静かなので、「機嫌悪いのかな?」「本当は今日来たくなかったのかな?」と心配するかもしれない。
私とぽんさんともう1人、という3人の空間になった時は、ほとんどが私ともう1人が喋っていて、ぽんさんは相槌を打ったり聞かれて答えたりする程度のことが多かった。
相手がこちらのことをよく知っている場合は、「ぽんさんがあまり喋らないと思うけど不機嫌なわけじゃないから気にしないでね」ということを、それとなく相手に伝えておくこともある。
実際、ぽんさんは不機嫌で黙っているわけではなく、ただ優しさで自分から声をかけないだけなのだ。
感じが悪い、というわけでもなく、私ともう1人の話に耳を傾け、笑いながら聞いてくれて、相槌やリアクションもしてくれている。
話を聞いていないわけでもないから、こちらから「こうじゃなかったっけ?」「どう思う?」と聞くとちゃんと答えてくれる。
そういうスタイルを相手が理解してくれたら乗り越えていけそうだと思う。
苦手なままでも、大事にできる関係を
ASDの特性は、「直す」という感覚ではなくて、「その特性を含めて一緒に暮らす」という視点で考えていった方がいいと思う。
特性を理解した上で、「こうしたらやりやすいかも」というトライアンドエラーを繰り返す。
そうして少しずつ「前よりやりやすくなった」が増えていったら本人のためにも、相手のためにもなる。
苦手なものは誰にだってある。
でも、苦手だからと言って大切な人との関係まで切ってしまうのはもったいない。
もし相手が、ぽんさんが無口なことを気にしていたら、それがぽんさんなりの優しさであることを伝えて、知ってもらう。
それを受け入れてくれる人なら、今まで以上により良い関係が築けるはず。
2人とも大切にしたいという優しさが、ぽんさんを静かにさせている。
私はその不器用な優しさに、今日もまたちょっと救われている。
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