そっと寄り添ってくれる、優しい日もある
うちの愛犬・ベルは、遊ぶのがだいすきだ。
普段はおもちゃをくわえて走ってきて、私の足の甲に「ポトッ」と落としてくる。
これが地味に痛い。
わざとかな?と思うくらい、小指の上に落ちたりするからだ。
それでも私が無視していると、今度は少し離れた場所から――まるでスナイパーのような精度で――おもちゃを投げ飛ばしてくる。
PCに直撃することもしばしば。
遊びたい気持ちは手に取るように伝わる。
振り向くとドヤ顔でこっちを見ていたりする。
そんなふうに、元気で奔放で、自己主張たっぷりなベル。
だけど、あるときのベルの様子はいつもと違っていた。
「そばにいるね」と言っているように

その日は、在宅勤務中だった。
なんだか熱っぽくて、頭もぼんやり。座ってPCに向かっているだけでやっとだったけど、打ち合わせもあるし、締切もあるし……。
出社よりはマシだから頑張ろうと、ふらふらしながら椅子に座っていた。
そんな私を見て、ベルはいつも通りにおもちゃを持ってくることも、ジャンプして膝に乗ってくることもなかった。
少し離れた場所から、じっと私を見ていた。
「どうしたの?」と声をかけると静かに歩いてきて、そっと私の膝に乗ってきた。
すぐに丸くなって、手をペロペロ舐めて、静かに寝息を立て始める。
その体温が、じんわりと伝わってくる。
ベルは、私が元気じゃないってちゃんとわかっていた。
毎月やってくる、あの痛みの日も
ベルがそばにいてくれるのは、体調を崩した日だけじゃない。
月に一度の、あの“お腹が痛くて動けなくなる日”にも、ベルはいつも寄り添ってくれる。
そういう時は、膝の上でお腹側にくっついてくれる。
温めるべきお腹を、ベルが全身を使って温めてくれるのだ。
仕事どころじゃなくて、椅子に座っているのもしんどくて、どうしようもなくなって布団に横になると、ベルも静かに後をついてくる。
顔をじっと覗き込んだあと、何も言わずに布団に入り込み、お腹にぴったりとくっついて丸くなる。
まるで「ここが温めどころでしょ?」とでも言いたげな表情で。
こちらから手を伸ばして抱き寄せると、普段なら「今はそんな気分じゃない」みたいに鼻を鳴らしたり、腕を抜け出して布団から出ていったりするのに、その日は大人しくじっとしている。
そして布団の中から私の顔をじっと見つめてくる。
その瞳が、「大丈夫?」って言ってるようで、なんだか胸が熱くなる。
そばにいるだけで、支えになってくれる

ベルは、私が言葉にしなくても気持ちを察してくれるときがある。
毎回じゃないけど、「今はあそんじゃダメなんだ」って、ちゃんとわかる瞬間がある。
それが本当に不思議で、ありがたくて、あたたかい。
「なんて優しい子なの…!」と感激してもみくちゃに撫で回しても、ベルは大人しくしている。
犬って、ただのペットじゃない。
家族でもあり、心の支えでもある。
そして時々、私よりずっと“空気が読める存在”でもあるのだ。
どっちのベルも、私の大切な相棒
元気いっぱいでおもちゃを投げてくる日も、
静かにお腹にくっついて寄り添ってくれる日も、どちらもベルらしい。
まるで「にんげんにもいろんな日があるように、いぬにもいろんな顔があるよ」と言われているみたいだ。
そんなふうにして、今日も私はベルに癒されながら、なんとかやっている。
ベル、いつもありがとう。
これからも、そばにいてね。