黒い爪と、最初の挫折

犬と暮らしている以上、犬の爪切り問題を避けては通れない。
ベルの爪は7割くらいが黒い爪、残りは白い爪。
犬を飼った経験のある人なら分かるかもしれないけれど、黒い爪って爪切りのハードルがぐっと上がる。
どこまで血管があるか見た目で判断ができないから。
犬と暮らすなら自分たちで最低限お手入れをできるようにならなければ!と奮起した。
ペットショップの親切なお兄さんにも色々話を聞かせてもらい、お勧めの爪切り道具を教えてもらったこともある。
ただ…実は一度家での爪切りに挑戦して、失敗に終わっていた。
爪先を少し切った時、普段めったに鳴かないベルが「キャン!」と叫んだのだ。
深爪してしまったようで、私は心底反省し、ベルに痛い思いをさせてしまったことに落ち込んだ。
幸いにもその爪は大事には至らず、その直後からベルは元気に走り回ってくれていた。
たった一度の失敗で臆病な話だけど、私はそれ以来自分で爪切りをするのが怖くなってしまった。
また深爪したらどうしよう…全部の爪を同じくらいの長さに、自力で切れるだろうか?
それに爪切りをした後はやすりをかけなければいけない。
その仕上げまで自力で、しかも毎月できるだろうか?
―――もちろん、「できない」という結論に至った。
それでベルに痛い思いをさせるかもしれないくらいなら、最初からプロに頼もうと決意したのだ。
だから、プロにお願いすることに

トリミングサロンや動物病院、ペットショップで有料で爪切りをしてくれることがある。
イタグレはトリミングサロンにあまりご縁がないので、主にペットショップか動物病院でベルの爪を切ってもらうことが多かった。
当時近くの動物病院で爪切りをお願いした時は500円で爪切りをしてくれていた。
ただやすりはなし。
やすりなしだと、切りたての爪の端々が尖っているので、引っかかれたり爪が当たったりすると結構痛い。
ベルも自分の脚で体や耳を掻いた時に「痛っ!」とびっくりしていることがあった。
たまに強く掻きすぎてしまった時に血が出てしまうこともある。
ペットショップでお願いした際は1000円で、爪切りとやすりをかけてくれていた。
やすりをかけてくれると爪が全体的に丸みを帯びて全然違うのだ。
もし爪切りはともかく、“やすりって必要?”と思っている人がいたら、私は全力でやすりを勧めたい。
動物病院やペットショップによって異なるだろうけれど、そんな差だったので毎回ペットショップでお願いするようになっていた。
なぜかアイドル扱いされるベル

ベルはそこのペットショップの出身ではないのに、ペットショップの店員さんたちから大変愛されている。
ベルを抱えて来店すると、「あ!ベル~~!!」と笑顔で迎えてくれることも多い。
ベルもしっぽブンブンで大はしゃぎ。
実は以前、そのペットショップで併設しているペットホテルに一週間近くベルを預けたことがある。
ぽんさんの家族に不幸があった際に急遽地元へ行くことになり、ベルを連れて行くには遠すぎたのだ。
思いがけず葬儀や相続に関するトラブルに見舞われて結果的に日数が延びてしまい、ぽんさんと私はベルに会いたくてたまらなかった。
ペットホテルの方はLINEで毎日ベルの写真付きで報告をしてくれていた。
その時にお世話をしてくれていた方々がそのペットショップにいる。
「ベルちゃんはすごくお利口さんで、お世話係は大人気で争奪戦でした」
「休憩時間になるとみんなベルちゃんに会いに行ってました!」
「まるでアイドルみたいに可愛くて、いつ会いに行っても喜んでお迎えしてくれて、ほんとに癒されました!」
と笑顔で教えてくれた店員さんもいた。
吠えまくったり噛み癖がひどかったりご飯を食べなかったりで店員さんを警戒するワンちゃんが大半の中、ベルは吠えることも噛むことも食事拒否もなく、ただ甘えてくれたので、異彩を放っていたらしい。
お迎えに行った時にはみんな寂しそうで、ベルには「パパとママが来てくれてよかったね」と話しかけながらも「また来てね」と残念がってくれるほどだった。
爪切りは苦手だけど…

すごく可愛がってもらえたおかげで、ベルはそのペットショップに行くのが楽しみなよう。
ただ、爪切り自体はやっぱり好きではないようだ。
ペットショップに到着して、店員さんたちに笑顔でお迎えしてもらい、ベルもご機嫌で挨拶をする。
そうして「いつもの爪切りとやすりをお願いします」「分かりました、お預かりします」というやり取りをしてベルを預け、ぽんさんと私はベルの視界に入らないところに移動して、店内の子犬や子猫を眺めながら終わるのを待つ。
「終わりましたよ」と声をかけてもらってお迎えに行くと、少し不満げな顔をしたベルが待っている。
でも私たちの顔を見ると「あっパパとママだ!」と気付いて駆け寄ってきて、でも不意に別の犬猫の匂いが気になってそっちに行こうとして、そのうちに別の店員さんの匂いが気になって、と忙しない。
なんだかんだ、お店を出る頃には店員さんたちに笑顔でお見送りされ、尻尾を振って応えている。
それを毎月繰り返す。
“いつもの日常”があるから

そして帰り道、少しだけ不満げな顔でこちらを見上げながらも、しっぽはしっかり振っているベル。
「がんばったね」と声をかけると、私の足元にぴたっと寄り添って歩く。
おうちに着いたら、いつものおもちゃをくわえて「ほら、遊ぼうよ」と誘ってくる。
爪切りはやっぱり苦手だけど、終わったあとの“いつもの日常”が待っていることを知っているから、きっと今日も頑張ってくれたんだと思う。
ありがとう、ベル。
また来月も、一緒にがんばろうね。
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