犬が雷を怖がる理由と対策|甘えん坊イタグレが膝に乗ってきた日

はじめての雷。ぷるぷる震える小さな体

ベルがうちに来て、初めて雷を経験した日のことは、今でもよく覚えている。

あの日は、なんだか天気が不穏だった。
風も強くて、空もどんよりしていた。
やがて大粒の雨が降ってきて、窓の外がザーッと白くけぶった。

ベルは、まだ生後4ヶ月にも満たない頃だった。
ふにゃふにゃの足取りで、リビングを行ったり来たりしていた。
ぽんさんは仕事で家を出ていたから、その日は私と二人きり。
おもちゃの引っ張りっこをして遊んでいたところだった。

突然、「ドーーーン!」と地響きのような雷の音が鳴った。

私も「わっ」と声が出るほどだったので、初めて雷を体験したベルにとっては事件だったと思う。

「なにこれ…こわい!」と目が語っていた

引っ張りっこしていた手を離して、ベルのほうを見ると──ピタッと動きを止めて、まん丸な目でこちらを見ていた。
元々大きな目が、いつもより2割増しで大きくなっていた。
まるで「今の何!?」と聞いているようだった。

そのまま、よろよろと膝によじ登ってきて、ちょこんと座った。
ぷるぷる震えながら、私のお腹に小さな体をぎゅっと押しつけてきた。
顔をあげて、キョロキョロとあたりを見回していたけれど、雷が鳴るたびに「ブルッ」と震えて、さらに深く体を埋めてきた。

──かわいそうすぎる。でも、かわいすぎた。

その必死な様子がいじらしくて、私はそっと抱きしめて、「大丈夫だよ、大丈夫」と声をかけ続けた。
こんなにも小さな命が、自然の音にびっくりして、私にしがみついている。その事実が、たまらなく愛おしかった。

「ちょっと撮るだけだから」と動画を撮った飼い主の葛藤

実は、その姿をちょっとだけ動画に撮った。
「こんなにビビって可哀想に…けどたまらなく可愛い…」と、罪悪感と親バカ心がせめぎ合った結果だった。

帰宅したぽんさんに見せると、「可愛いなこれ、もっかい見せて」と大爆笑していた。ベル、ごめん。
その後デレデレのぽんさんに甘やかされたベル。
その日以来、ベルの中で「雷=超コワイもの」となったようだった。

ちなみに今でもその短い動画は私のスマホに保存されている。
時々写真を見返す中でその動画を再生してはクスッと笑わされている。

膝に乗って離れない、甘えん坊スイッチ発動

元々ベルは甘えん坊だけれど、雷が鳴るとそのレベルが急上昇する。
私かぽんさんがいればいいけれど、もし誰もいないときに雷が鳴ったら?と考えると心配だった。

一時は「犬用の雷対策グッズ」を使おうかとも思った。もしくは雷が鳴ったらカーテンを閉めるとか、落ち着くBGMをかけるとか。
でも、もし私もぽんさんもいない時に雷が鳴ったら。
…結局その対策ができていないことで余計に怖い思いをさえてしまいそうで、結局やめた。

我が家では以前から遮音カーテンを使用している。
普段からカーテンを出かける時に閉めておけば、万一雷が鳴ることがあっても少しはマシなはず。
「雷が鳴ったら」じゃなくて「出かける時に閉めて行くんだ」と思ってくれたらそれでいいやと思った。

「いつも通り」が、いちばんの安心かもしれない

それよりも、「雷が鳴っても、うちは普段通り」という空気を保つようにした。
私たちがいつも通りにしゃべって、笑って、「大丈夫大丈夫」と自然にふるまう。
それが一番、ベルの不安を煽らないんじゃないかと思った。

その効果かどうかは分からないけれど、ベルは少しずつ雷に慣れてきたようだった。

今でも苦手には違いない。雷が鳴ると、そそくさと人の膝に乗ってくる。
そして、ぴたっと座って、首だけスッと伸ばして遠くを見る。
平気なフリをしているつもりかもしれない。

けれど、膝にいる。結局怖いんだね。

その間、人間はもちろん動けない。
飲みかけのお茶も、充電中のスマホも、全てを諦めるしかなかった。

雷が鳴るたび、ビビりで甘えん坊なベルが、まっすぐ私のところにやってくる。
その姿は、何年経っても変わらず、たまらなく愛おしかった。

犬が雷を怖がるのは、ふつうのことだった

ちなみに、犬が雷を怖がるのはとてもよくあることだった。
犬の耳は人間よりもずっと敏感で、遠くの音や微細な気圧の変化まで感じ取る。
だから「人間より先に雷に気付いている」ことも多いそうだ。

ベルのように強く怖がる子には、以下のような対策がある。

愛犬の雷対策

✔ 安心できる場所(ハウス)を用意する
静かなクレートに毛布をかけるなど、雷の音や光を遮る工夫が有効。

✔ 飼い主が普段通りに振る舞う
「大丈夫?」と過剰に構いすぎると、不安が増すこともある。うちはこの方法が効果的だった。

✔ 落ち着ける音を流す
クラシックやホワイトノイズなどを流すと、雷の音が紛れて落ち着く子も多い。

✔ 雷対策グッズを活用する
「雷シャツ」や「リラックススプレー」なども選択肢。犬によって相性があるので試してみるのも手。

とはいえ、犬にとって一番の安心材料は「いつもの人が近くにいること」だったりする。

ベルもきっと、私の膝の上が一番安全だと思っているのだろう。
だから私は、雷が鳴るとコーヒーを諦めて、ひたすら動かずベルの椅子係になる。
これから先、何年経ってもそうしていたいと思う。