もくじ
嫌われたくない。だから言えない
ぽんさんには、「嫌われたくない」という気持ちがとても強くある。
自分の意見をはっきり言うことで相手に不快な思いをさせるくらいなら、黙っていた方がいい。
そんな考えが、彼の中には根深く染みついている。
たとえば、友達の発言や行動の中にちょっとひっかかることがあっても、それを指摘することができない。
「それはちょっと嫌だな」「やめた方がいいんじゃない?」と伝えることができない。
相手に悪気はなかったのかもしれない。変に何かを言って関係がギクシャクするくらいなら我慢した方がいい。
そんなふうに自分の中で気持ちを処理して、言葉にしないことを選ぶ。
モヤモヤを飲み込んだあとの自己嫌悪
でも、心の中に押し込めたモヤモヤは、決して消えるわけではない。
ぽんさんは、自分がその場で気持ちを伝えられなかったことに対して、後から自己嫌悪に陥ってしまうことがある。
「あのとき、なんでちゃんと言えなかったんだろう」
「また自分の気持ちを飲み込んでしまった」
と、自分を責める。
「これって本当に友達?」と感じてしまうとき
そして時には、ふと立ち止まって考える。
「これって本当に友達なのかな?」と。
自分がこんなにも遠慮して、気を使って、モヤモヤした気持ちを抱えるなら、もしかしてその関係は対等じゃないのでは?
本当に友達なら、相手のためを思って注意することも必要だろうに、それができないのは相手を大切に思っていないからでは?
そんなふうに疑問を持ってしまうこともある。
ASDとACの影響
ASD(自閉スペクトラム症)の特性として、「相手に合わせすぎてしまう」「自分の気持ちをうまく表現できない」といった傾向がある。
ぽんさんにもその傾向が強く見られる。
自分の中で違和感や不満を感じても、それをどう伝えたらいいかわからないまま、飲み込んでしまうことが多い。
加えて、ぽんさんにはAC(アダルトチルドレン)的な気質もある。
家庭の中で空気を読みながら過ごしてきた経験が、今の「嫌われたくない」「波風を立てたくない」という強い意識につながっているように思う。
自分の気持ちを飲み込むことで保つ「関係」
そんなぽんさんにとって、「友達」という存在は、喜びと同時に不安ももたらす存在だ。
仲良くしたいし、楽しく過ごしたいけれど、自分が我慢することでしか関係を保てないのだとしたら、それは本当に「友達」なのか? という問いにぶつかってしまうのだ。
たとえば、予定を何度もドタキャンしてくる友達がいたとする。
ぽんさんは、「きっと向こうも都合があるんだろう」「無理に合わせてもらうのも悪いし」「仕方ないことだ」と、自分を納得させようとする。
でも、内心ではやっぱり寂しいし、傷ついている。
その気持ちを相手に伝えたい。
でも、伝えて関係が壊れてしまうことを思うと、怖くて言えない。
傷つきたくない。でも、言えない。傷つけたくないから。
自分の言葉で相手を傷つけてしまったら。
自分の発言をきっかけに、今の関係にヒビが入ってしまったら。
それが怖くて踏み出せない。
だから、ぽんさんは悩む。
関係を壊したくない。
でも、このままでは自分がしんどい。
その板挟みの中で、自分の中の答えを見つけられず、ぐるぐると考え続けてしまう。
私は、自分が嫌だと思うことと理由を相手に伝えて、それでも相手が態度を改めようとしないなら「それまでの関係だったんだ」と割り切って距離を置いてしまう。
とことん相手が嫌なら、嫌だとも言わずに黙って離れていくこともある。その方が楽だから。
自分が我慢しなきゃいけない相手に貴重な時間を費やせるほど私は優しくないし、自分が好きじゃない人から嫌われてもあまり気にしない。
だからそんなぽんさんを見ていると、私は「自分の時間を優先しなよ」「もっと自分の気持ちを大事にしていいんだよ」と伝えたくなる。
でも、その言葉がプレッシャーになることもある。
ぽんさんは、頭では「自分の気持ちを言うのは大切なことだ」と理解している。
でも、どうしてもその一歩が踏み出せない。
口にした瞬間、相手の表情が曇ることが怖い。傷つけてしまうことが怖い。
そして、何より自分が「悪者」になること、相手に嫌われてしまうことが怖いのだ。
優しさが、自分を苦しめることもある
私はぽんさんの優しさをよく知っている。
そして、その優しさがぽんさん自身を苦しめていることも知っている。
だからこそ、「言えない自分」を責めないでほしいと願っている。
言えるようになるには、時間がかかる。少しずつでいい。
小さな「違和感」を言葉にする練習からでいい。
人間関係は、我慢の上に成り立つものではない。
対等で、互いに安心できる関係が「友達」だと思う。
ぽんさんが少しずつ、自分の気持ちを大切にしながら、安心できる関係を築いていけますように。
同じように「言いたいのに言えない」と悩んでいる人がいたら、どうか自分を責めないで。
その優しさは、きっとちゃんと届いてる。
そして自分の気持ちも、もっと大切にしてあげてほしい。